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 第3日
 2015年7月14日(火) 「オールスターゲーム観戦」     2015.8.30 公開
 
 
 
 ジェットラグが続いているせいかあまり眠れず、4時頃にトイレに起きてから、しばらくボーっとして時を過ごした。7時30分、起き出して朝食を済ませる。
 いい天気だ。
 部屋で少し時間を潰してから、11時、迎えのタクシーに乗って出掛ける。
 昨日利用したタクシーの兄ちゃんにお願いしていたが、この日は忙しいようで、彼と非常によく似た弟がやってきた。
 車は白のアウディで、これまたピカピカ上等のコンディション。
 話を聞くと、兄弟はセルビア出身で、16年前にアメリカにやってきたそう。
 1990年代の旧ユーゴスラヴィア解体以降、かの地ではしばらく紛争が続いていたはずだが、
 16年前の1999年といえばNATOによるベオグラード空爆があった年。
 深くは聞けなかったが、おそらくこの兄弟も相当な修羅場をくぐってきて今に至るのだろう。
 
 
  快晴 暑くなりそうだ
 
 この日はオールスターゲーム本戦の前に、出場する選手やその家族たちがシヴォレーの荷台に乗って街の中心部をパレードするという、
 レッドカーペットショーなるイヴェントがあり、それを観るためにダウンタウンまで送ってもらった。
 約10分で到着し、$26。
 まずは昼時なので、ランチ。
 昨日、ミレニアムホテルで雨宿りしている時におじいちゃんが教えてくれたイタリア料理店に行ってみたが、
 あいにく昼の営業はしていないようで、夜からだった。
 なので、タクシーの兄ちゃんが教えてくれたその名もミスター・スシという寿司店へ勇気を出して突撃。
 ウィークデイなのでビジネスマン風の客も多く、なかなかにぎわっている。
 厨房カウンターの中にはいかにもな感じの調理人がいたので店員に訊いたところ、しかしそのオーナーシェフは日本人ではなく韓国人だった。
 ちなみに横のテーブルには日本人男性3名グループの客がいた。
 シンシナティに来て初めて認識した日本人だ。
 握り寿司のセットと天ぷらうどんをオーダー。
 思っていたよりもクオリティーは高かったが、なぜか寿司のわさびは別盛りで、うどんの七味は最初からかけられていた。
 店員の対応もよかったが、店内の冷房は強烈過ぎた。
 大体どこの建物もそうだけど。
 また、日本でも問題になっていることだけど、こっちでも歩きスマホの人がとても多い。
 
 
  その名もミスター・スシ
 
 
  握り寿司
 
 レッドカーペットショーは13時にウェスティンホテルを出発して始まる予定で、その少し前に経路でスタンバイする。
 当然、たくさんの観衆がすでに集まっている。
 選手たちの到着を待っている間に客が退屈しないよう、
 メジャー各球団のマスコットがレッドカーペットの上に出てきていろいろファンサーヴィスを行っていたが、
 このあたりはいかにもアメリカンスポーツらしい。
 パッと見、子供に見えてしまわなくもない、小柄なアジア人代表の妻は、グッズを配っていたスタッフと目が合い、見事にそれをもらっていた。
 
 
  レッドカーペットの横にファンたちが集まっている
 
 
  待っている間、マスコットたちがファンサーヴィス
 
 強い陽射しの下だったが、クレイトン・カーショウ、アンドリュー・マッカチェン、ブライス・ハーパー、マックス・シャーザー、
 マディソン・バムガーナーなどのスーパースターの姿を間近で拝むことができ、エキサイティングな時間だった。
 
 
  渋いオーラをまとうマディソン・バムガーナー
 
 
  クレイトン・カーショウの表情は明るい
 
 
  ファンにグッズを投げるK-Rod
 
 
  中には一族郎党皆乗っけてるんじゃないかという選手も
 
 1時間ほど観て現場を離れ、タクシーを拾ってオハイオ川へと向かった。
 実は前日、ホームランダービー観戦前に食事をしている時、妻がオハイオ川を遊覧船が行き来しているのを見つけており、
 今日のレッドカーペットとオールスターゲームの間の空き時間に乗れるんじゃないか、と目論んでいた。
 ちなみにこの時乗った車のドライヴァーは、セネガルから17年前にやってきたという親切なおっちゃん。
 タクシー運転手は外国人が多いのかな。
 BBリヴァーボーツというボートクルーズ催行会社の乗り場に行き、
 あたりをつけていた15時出航のクルーズのチケット無事購入、乗船に成功した。
 オールスター期間中につき警備強化中とのことで、警察官が何人か待合室に詰めていた。
 といっても客と談笑などして、雰囲気は緩かったが。
 
 
  BBリヴァーボーツへ 川の向こうに球場が見える
 
 
  この外輪船でクルーズへ出る
 
 ビッグイヴェント中で街に多くの人が集まっているので、チケット買えるかな、と少し心配していたのだが、
 200~300人ほど乗れそうな大きな船に、客は数十人単位。
 かなりゆったりとクルーズを楽しむことができた。
 お世辞にもきれいとは言えない、茶色く濁ったオハイオ川の上を、これまたオールスター仕様の船でゆっくり行ったり来たりの約1時間20分。
 途中、水族館などがある、川の南側に位置する観光地・ニューポートもじっくり見られた。
 先程の警官たちだろうか、コーストガードのボートもくっついてきている。
 クルーズの後半の時間帯に、前日同様、ゲリラ豪雨が襲ってきた。
 ほどなくして止んだが、乗船中で本当によかった。
 
 
  茶色く濁ったオハイオ川を往く
 
 下船後、橋を歩いてオハイオ川を渡り、グレイトアメリカンボールパークを目指す。
 歩いている途中も一度、雨が短時間降ったが、通りすがった騎馬警官隊と一緒にトンネルの下で雨宿り。
 川沿い、北側にある公園でもオールスターに関連したイヴェントをやっていたが、ゲームのチケットでは入れず、これ専用のものがいるようだ。
 
 
  橋を歩いて渡り、対岸へ戻る
 
 
  雨宿りする騎馬警官隊
 
 
  川沿いの公園でも関連イヴェントが行われていた
 
 17時過ぎ、球場に入った。
 時間があったので結構隅々まで歩き回ってから、メキシカンフードの店で豪勢なナチョスを買って食べた。
 輪切りの唐辛子は信じられないほど辛かったが、美味かった。
 
 
  いよいよオールスター当日 球場内は多くの人でごった返す
 
 
  山盛りのナチョス
 
 席は1塁側の内野席で、1階の中ほど。
 前日、ホームランダービーを観た席よりは少し落ちるが、見やすい良席だ。
 前列には典型的なおっちゃん5人組が横並びで座っていたが、皆ヴォリュームがすごいので、席に対して体の幅がギチギチ。
 
 
  座席からの眺め
 
 19:30頃からセレモニーが始まった。
 序盤では、フランチャイズフォーと称して、各チームのフランチャイズビルダーと言える選手を4人ずつ場内ヴィジョンで紹介しており、
 実際に球場にも、ピート・ローズ(!)、ハンク・アーロン、バリー・ラーキン、サンディ・コーファックス、ウィリー・メイズ、
 ジョニー・ベンチなどといったレジェンドたちが姿を見せていた。
 皆ものすごいメンツだが、なんといっても驚いたのはピート・ローズ。
 そりゃシンシナティだから地元のスーパースターとはいえ、永久追放以降、こうのような表舞台にはほとんで出ていなかったはず。
 これだけの大舞台で堂々と紹介され、万雷の拍手喝采を浴びるとは、まさかのシーンであった。
 
 
  なんとピート・ローズが登場
 
 続いて、巨大な星条旗が外野に広げられ、戦闘機がキーンと球場上空を飛び、軍人たちが紹介される一幕も。
 確かに戦闘機はかっこよかったが、相変わらず9.11以降、軍の存在が称えられ、
 端的に言うと彼らの主張する"正義"に基づく戦争が礼賛される傾向がアメリカにはある。
 すっかり定番になった"GOD BLESS AMERICA"の斉唱なんかも一例だ。
 
 
  外野いっぱいに星条旗が広げられ、場内ヴィジョンには戦闘機の姿が
 
 選手紹介に入り、やはり地元のトッド・フレイジャーの時には場内が盛り上がる。
 そして昨日と同様、セントルイス・カーディナルス陣がコールされると、大きなブーイング。
 かつてカーディナルスの主力だったアルバート・プーホールズが、ブーイングが上がるたびに胸のチーム名を指さして、
 今はもうエンジェルスにいるんだよ、と苦笑いしていたのが面白かった。
 
 
  勢揃いする選手たち
 
 20:30過ぎ、長いセレモニーが終わり、ようやくプレイボールと相成った。
 1回表、ナショナルリーグ先発、今季絶好調のザック・グレインキーに対するアメリカンリーグの1番バッター、
 マイク・トラウトが放った打球はフラフラとライトのポール際へ。
 ファウルかな、スタンドかな、捕るかな、と思っていたら、なんと最前列に飛び込む、いきなりのホームラン!
 呆気なく、正直盛り上がる暇もなかった。
 ここからグレインキーは見事に立て直し、奪三振ショーを見せる。
 結局2イニング投げてヒットはこのホームランのみ、4三振を奪った。
 
 
  先発のザック・グレインキー
 
 
  マイク・トラウトがいきなりホームラン!
 
 対するアメリカンリーグの先発は、去年いきなりブレイクしたダラス・カイケル。
 まだ知名度はあまり高くないが、若さに見合わぬ堅実な投球をする印象がある。
 今年の成績も素晴らしい。
 初回の立ち上がりはよかったが、2回、ジョニー・ペラルタにタイムリーヒットを打たれて1点を失い、1-1の同点に。
 3回、4回はそれぞれのピッチャーが無難に抑えて、両チーム無得点。
 しかし、フェリックス・ヘルナンデスからデヴィッド・プライスに、
 あるいはマディソン・バムガーナーからクレイトン・カーショウへ1イニングずつつなぐリレーとか、
 まさしくオールスターでしか観られない、信じ難いほどゴージャスなシーンだ。
 
 
  マウンドへ向かうキング、フェリックス・ヘルナンデス
 
 
  マディソン・バムガーナー
 
 そのカーショウが精彩を欠き、5回表、ヒットと四球でランナーを溜めたところに、
 プリンス・フィルダーとロレンゾ・ケインに連続タイムリーを浴びて2失点。
 レギュラーシーズンではあまり見せない体たらくでは?
 
 途中、ホットドッグに細切りチーズがたっぷりかかったシンシナティ名物のチリと、アイスクリームを買い喰い。
 
 
  シンシナティ名物のチリ
 
 6回裏には、1-3で負けているナショナルリーグのアンドリュー・マッカチェンがクリス・アーチャーからレフトへソロホームランを放ち、1点差に詰め寄る。
 しかし、アメリカンリーグも7回、8回にブライアン・ドジャーのソロなどで計3点を追加し、ナショナルリーグを突き放す。
 この時は打ち込まれて2点取られてしまったが、今年は防御率1点台と、まだまだ健在なK-Rod、フランシスコ・ロドリゲスを観られたのも嬉しかった。
 あと面白かったのは、カーディナルスのヤーディアー・モリーナが名前をコールされ打席に立つと激しいブーイングが起きるのに、
 いざヒットを打つと、今夜だけは味方だから、とばかりに拍手と歓声にコロッと変わるところ。
 
 
  少し太ったか? K-Rod
 
 
  打席に入るとブーイング、打つと歓声に変わるヤーディアー・モリーナ
 
 試合は6-2とアメリカンリーグがリードして9回へ。
 負けてはいるが、当然この流れで最終回のマウンドに立つのは予想通り、シンシナティ・レッズのクローザー、アロルディス・チャップマン。
 WBCで日本と対戦した時はただ球が速いだけで、コントロールもメンタリティーも未熟なピッチャーだったが、
 アメリカに渡ってあれから大きく成長を遂げている。
 観客の盛り上がりも、この試合の中では最高潮に達した。
 そして注目の球速は、期待に違わず100マイル超えを連発!
 最速103マイル(約166km)を記録した。
 そして内容も3者連続三振と完璧。
 いやあ、いいもん観た。
 
 
  アロルディス・チャップマンの登場に球場は総立ち
 
 
  キューバの速球王、チャップマン
 
 
  出た、103マイル(約166km)!
 
 9回裏、ナショナルリーグが1点返すが及ばず、試合は6-3でアメリカンリーグが勝利した。
 MVPは先頭打者ホームランを放ったトラウト。
 2年連続のオールスターMVPは史上初めて、去年はレギュラーシーズンMVPも取っているし、
 文字通り現在のMLBの頂点に君臨する5ツールプレイヤーだ。
 ちなみに前日のホームランダービーで優勝した地元・シンシナティのフレイジャーは3打数ノーヒット。
 盛り上がり過ぎて疲れたかな?
 全体通して、ヴェテランよりも若手の活躍が目立った2015年のオールスターゲームだった。
 
 
  アメリカンリーグの勝利で試合終了
 
 
  MVPはトラウト
 
 ゲームセットは23:40ぐらいになったが、オールスターゲームなのに試合終盤になるとボチボチ観客が帰り出すのには少々驚いた。
 ウィークデイの火曜夜だし、あとレッズが所属するナショナルリーグが負けていたことも影響したのかな。
 
 
  球場の外にはたくさんの人たちが
 
 球場を出て少し歩き、この日はルネッサンスホテルの前で自力でタクシーを捕まえる。
 同じくタクシーを拾おうと居合わせた男性と、向かう方向が一緒だったので相乗りすることにしたが、なんと日本人だった。
 大阪在住、阪神ファンのNさんという方で、毎年MLBを観に渡米しており、去年もミネソタでオールスターを観戦したそう。
 またどこかでお会いできますことを。
 
 24:15ぐらいにホテルに到着。
 思ったよりも早く帰ることができた。
 26時頃、床に就く。
 
 
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