海洋空間佳本


アジア新聞屋台村 アジア新聞屋台村」★★★★★
高野秀行
集英社

2006.9.5 記
この本に限らず、「ワセダ三畳青春記」も、「幻獣ムベンベを追え」も、「巨流アマゾンを遡れ」も、それ以外もそうなんだけど、高野秀行の作品は1冊通して読むと、見事なまでに起承転結が構築されているなあ、といつも気付かされる。
書き出しはあくまで軽く、速く、そしてユーモアにあふれた筆致でグイと読者の興味を引き寄せ、そして中盤ではさらに破天荒に、それでいてリアルに展開してゆくエンターテインメントに満ちた物語にドップリと浸からせておきながら、後半に入ると「あれ、なんだかちょっと雲行きが怪しくなってきたぞ…?」と若干不安定な気分に陥らせる。
そして最後、締めくくりはあくまでもさわやかな大団円でありながらも、ほんのりとした寂しさと物哀しさを読む人の心に植えつけていく…。
1つ1つのエピソードの描写やその織り成すテンポの絶妙さも相変わらずの名人芸、それに加えてマクロな視点から見ても稀代のストーリーテラーであることは間違いないと判断できる卓越した筆運び!
しかもこれを書き下ろしでなく、雑誌の連載で創り上げてしまうところがまた、すごい。

最後に。
これは“小説”だそうだが、私にはそう思えなかった!





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