海洋空間佳本


キャプテンサンダーボルト キャプテンサンダーボルト」★★★★☆
阿部和重、伊坂幸太郎
文藝春秋

2015.2.25 記
なるほど、言われてみるとこの2人のこれまでの作風からは、どこかしら重なる匂いが立ち上っていたかも、と思わされる。
山形県出身の阿部和重氏と、長く宮城県に拠点を置いている伊坂幸太郎氏が、おそらくは震災の存在というのも大きかったんだろう、タッグを組んで、蔵王を舞台にド派手で痛快なエンターテインメントを設えた。
合作といっても、辻仁成氏と江國香織氏による「冷静と情熱のあいだ」、あるいは岡嶋二人名義の作品群などとは制作過程をまったく異にする今作であるから、様々な障壁をクリアしてよくぞここまで仕上げたものだ、さすが、と素直に感嘆してしまう。
内容としては、あまりに娯楽性に寄り過ぎたか、ちょっと限度を超えてブッ飛んでいる箇所が散見され、ご都合主義もここに極まれり、と思わざるを得ない筋運びは大きなマイナスポイントではあるが、あの「アヒルと鴨のコインロッカー」の伊坂幸太郎と「シンセミア」の阿部和重が共作ですよこれは、という読者の心理的興奮がその瑕疵を凌駕してしまい、甘い星4つ。





戻る

表紙