海洋空間佳本


その犬の歩むところ その犬の歩むところ」★★★★☆
ボストン・テラン
文藝春秋

2018.1.23 記
読む前は、もう少し犬を全面に出したというか犬目線の物語なのかと思ったが、あくまで語り手は人たちであり、その人間たちの強さや弱さ、幸せや不幸せ、素晴らしさやどうしようもなさ等を描き出すためのギミック、触媒として犬が使われているような類の作品だと、読後は思いを新たにした。
作者が言いたいところの本質的な部分は、大戦後の朝鮮戦争やヴェトナム戦争、近年では湾岸戦争や911にイラク戦争、それにカトリーナ等といった個人の力では抗しきれない災厄を体験したアメリカ人しか理解できないような気もするが、それらを潜り抜け翻弄されてきた人たちの間でまた、物言わぬギヴが運命の流れに翻弄されながらもジッと耐え続けている様には素直に感動を覚える。
ギヴが、犬たちがいなければ再生できなかったであろう人たちが、確かにいた。
全編まるで回想かダイジェストかのような著者独特のスピード感溢れる簡素で淡々とした文体も、変に物語に湿り気を与えず良かったように思う。





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