海洋空間佳本


神は数学者か? 神は数学者か?」★★★★☆
マリオ・リヴィオ
早川書房

2012.12.6 記
息抜きとしてリラックスして読める小説とは違い、集中力を持って臨まないと私の頭では理解が覚束ない、久々に気合いを必要とする1冊だったが、その内容は非常に読み応えがあった。
冒頭部分から既に、数学と哲学の根幹を重ねた上で記述を進めているところにまず感心かつ納得をして、そして古代ギリシャ時代から現代に至るまでを、基本的には時系列に沿って、"数学の不条理な有効性"というテーマに絞って歴史が紐解かれている形式に、読み易さと併せて強い説得力を感じた。
根元的な問いは、例えば哲学の分野における合理論&経験論や、心理学の中での認知科学、あるいは微細な物理世界を扱う量子力学などとも密接に結びついているということが、ただの直観ではなく具体的な言葉で説明されており、それこそ人が生来持っているであろう知的好奇心を大いに刺激する。
脳の構造にまで考察は及ぶが、それすらも極めてナチュラルな流れ。
著者の幅広い興味の矛先と、それらを有機的に融合する高い思考能力を思い知る。

私たちはなぜ生まれ、生きているのか? ということを考えても実はないし、そこに意味などないのかもしれないけれど、こうした壮大な疑問に取り組んで格闘し続ける一生を送る、というのもまた素晴らしいことじゃないか、と素直に思う。





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