海洋空間佳本


河原町ルヴォワール 河原町ルヴォワール」★★★★★
円居挽
講談社

2016.9.16 記
結果、シリーズを纏め上げる最終巻としてふさわしい傑作に仕上がっていると思う。
構造としての様式美を優先するあまりか、中盤までは各登場人物の台詞回しが、過去3作において確立されたキャラクターの枠をなんだか少しはみ出しているような印象もあったのだが、すべてが閉じた後で改めて感じるのは、そのような些末な違和を吹き飛ばしてしまう充足だった。

途中、いくつも示されていたはずの伏線から思い至ることのなかった自らの不明を恥じるべきかもしれないが、スケールの大きな双鴉の計と称すべき、今作の根幹を為す仕掛けには充分楽しませてもらい、素直に脱帽する。
これまでの今シリーズにおいては、お世辞にもフェアとは言えない、著者を神とする独特なミステリーワールドが構築されていた(そしてそれが魅力でもあった)と個人的には感じているのだが、最終作のここにきてようやく真っ向から正攻法でブチかますトリックを仕掛けてくれた、という印象だ。

最後も美しく締められているが、あれ、実は主人公ってこの2人だったの?





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