海洋空間佳本


黒い家 黒い家」★★★★★
貴志祐介
角川書店

2005.8.4 記
亡霊、悪魔、幽鬼に魑魅魍魎といった類のものが何一つ登場しないにもかかわらず、それらが幅を利かせるどんなホラー作品よりも怖かった。

子供の頃に「13日の金曜日」や「エルム街の悪夢」、「エクソシスト」などといったいわゆる典型的なホラー映画を観て、次は一体何が出てきてどんな仕掛けでビックリさせられるのだろうか…、と手に汗握り戦々恐々としていた、といった経験を持っている人は少なくないと思うが、それと同種の恐怖と焦燥、そしてそれを上回る期待を感じることができる活字作品である。
単なる、と言っては語弊があるが、文字の羅列、文章の積み重ねが、どんな映像よりもリアリティを持って読者に迫り、また実際に作品中の映像が明確なイメージとして脳裏に閃くこと必至である。

陳腐な表現だが、人間の奥底に潜みうる絶対悪意をこれでもかというほどに雄弁に物語っている。

お恥ずかしい話であるが、夜中、一人でこの小説を読んでいて、ついつい後ろが気になって幾度もキョロキョロしてしまった。
それぐらい、怖い。
でも途中で止めることができなくて、一晩で読み終えてしまった。

あ、映画は観ない方がいいと思います。





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