海洋空間佳本


NORTH 北へ NORTH 北へ」★★★★☆
スコット・ジュレク
NHK出版

2019.2.13 記
100マイルレースであれほどの実績を誇る世界トップクラスのトレイルランナーでも、ここまでの心身のダメージを負うんだ…というのが率直な反応だった。
そして、多くの人のサポートを受けて、文字通り満身創痍の状態になりながら完歩して成し遂げた新記録が、従来のものを僅かに(と簡単に言ってしまうのも咎めるが)3時間余り上回っただけとは…!
さらに付け加えると、スコット・ジュレクの前に記録を保持していたのはなんと女性!
我々凡人からすれば、100マイルを不眠で走り切る能力と2000マイル以上を数十日かけて歩き通す能力の間に差異は見出せないが、実は100m走とマラソンに求められる能力が異なるのと同様に、そこには歴然たる区別が存在しているのかもしれない。
どちらにせよ、山に入っていて、陽が傾き暗くなり始めた途端、「ヤバい、早く下りないと」とビクビクし出す私のようななんちゃってトレイルランナーには想像もつかない世界だが…。

このチャレンジには妻のジェイルーもスルーで同行しており、彼女の心情も折々で綴られているが、ジュレク家の物語としてはそれも非常に大きな意味合いを持っていて興味深いし、読み応えがある。
何枚ものカラー写真で旅の様子が伺い知れるのも良い。

ヴィーガンのアスリートとしても有名な著者だけに、道中の補給についてもっと詳しい説明があればなおありがたかったと思う。

巻末に収められた角幡唯介氏の解説は、ジュレクとおそらくは近しいフィールドに生きる文筆家としての目線が見事に表れた名文だ。





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