海洋空間佳本


ロズウェルなんか知らない ロズウェルなんか知らない」★★★★★
篠田節子
講談社

2008.10.6 記
これは面白かった。

第一に、女性作家がこの着想で書いたということに、感嘆した。
タイトルにロズウェルって。
こんなの、いつまでも幼稚性を残したアホな男の専売特許の世界のはずなのに。

設定、キャラクターなどに命を吹き込んでまずは読者の心をつかみ、そして途中までは主要登場人物たちの思惑通り事が運んで順風満帆。
しかしある時点で重大な問題が巻き起こって読者はハラハラドキドキ、しかし最後にはなんだかホッとするような大団円…、という、古き佳き邦画や連続ドラマのごとく、正しき起承転結を踏まえたストーリーだが、「そう上手くいくかい」と突っ込みたくなるような、お約束の展開だと分かっていてもまったく飽きさせないプロの筆運び。
重松清氏の「定年ゴジラ」を若干彷彿とさせるような、地に足着いた連作が巧みな文章と相まって非常に読みやすい。

それでいて読み物として面白いだけではなく、月並みだが現在我々が住み暮らす社会について一考する機会を呈してくれる。
特に、観光というものに対する著者の観点は非常に興味深い。

惜しむらくはちょっと平凡極まってしまった感のあるラストシーンだが、それをカヴァーしてあまりある素晴らしい完成度。





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