海洋空間佳本


人喰い 人喰い」★★★★☆
カール・ホフマン
亜紀書房

2019.11.27 記
小中学生の頃に愛読していた「ポケットムー」シリーズの「世界謎の10大事件」という巻に、確か"秘境に消えたロックフェラー"というサブタイトルで収蔵されていたと記憶している。
以来、これまでにこの失踪事件を扱った記事や書籍は何度か読んだが、当時のオランダ政府やインドネシア政府にアメリカ政府、そしてもちろん現場となったパプアニューギニアの政治的関係や立場を分析し、さらにはロックフェラー家と美術品収集の因縁にまで踏み込んで詳細に報告したものに接するのは初めてだ。
マイケル・ロックフェラーが辿った命運については、本書の序盤でいきなり結論めいた描写が生々しく綴られるが、そのショッキングな推察がどうやら事実だったらしい、と読み進むごとに納得感が増してくるような。

我々にとって身近ないわゆる"文明社会"から遠いところで生活しているコミュニティに関するルポタージュを読むといつも、彼らにとって"個"の概念はひたすら薄く、また生と死の距離が極めて近いことに驚くわけだが、今回もまたその例外ではなかった。





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