特に斬新な切り口というわけではなく、どちらかというと類型的とすら言える立て付けでありながら、文章、プロット及び構成、キャラクター、そしてリーダビリティ、いずれもが極めて高いレヴェルにあり、これぞ物語を追う醍醐味という、ずしりと質量のある読後感を得た。
紛れもなく骨太の傑作。
悪意を持って、あるいはそれに無自覚であったとしても、法治国家において公権力が暴走した場合、憲法に定められた権利を保障されているはずの国民個人が抵抗する術は何もない…という事実を、私たちは多くの実例を目の当たりにすることによって既に知っているが、改めて良くできたフィクションを突き付けられることで、その暗澹たる思いを新たにする。
そしてそれは、著者が選択したあまりに苛烈で無慈悲な結末によって強化されることになる。
余談ながらWOWOWのドラマ版や映画版の結末は原作とは異なるようだ。
それにしても鏑木慶一のように人格が完成したティーンエイジャーが果たしているだろうか…。 |