海洋空間佳本


約束の海 約束の海」★★★★☆
山崎豊子
新潮社

2016.11.20 記
山崎豊子氏の遺作であり、執筆中に亡くなられたため、未完のまま終わってしまった大作。
完成してさえいれば、間違いなく「白い巨塔」や「華麗なる一族」などと並ぶび、氏の著作を代表する大河小説となっただろう。

一つ一つの出来事ややり取りなどを、これでもかというほど微に入り細を穿って描写し、まさにディテールの数々を積み重ねながらも、紙幅が進むうちに作品が扱おうとしているテーマがどれほど壮大なものなのかを読者が思い知り、圧倒されていく…という、山崎氏らしい技術が今作にも如何なく込められている。
また、2010年代だからこそ、氏もこうした作品を著したかったのだろう、ということが本当によく分かる。
2013年に逝去された後の、ここ数年の情勢をご覧になっていたらどう感じられただろうか…。
そして、病魔に侵されながらもこうして新しい物語に精力的に取り組まれ続けた姿勢に、心から敬服する。





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