海洋空間佳本


ずうのめ人形 ずうのめ人形」★★★★☆
澤村伊智
KADOKAWA

2020.8.6 記
"都市伝説"という題材はもちろん、これまでに至るところで扱われているありきたりなテーマではあるけれども、特に我々世代の読者にとっては変わらず強い誘引力を発揮することは確かだし、前作同様、筆運びは達者で、ホラーとして、そしてミステリーとしても充分興味を持って読んでいくことができるのだが、やはり如何せんラストの破壊力が不足しているというか。
そもそもが"怪異は存在する"という前提に立っているシリーズなので、立場を異にする京極堂シリーズと比べるのはフェアではないかもしれないが、例えば後者は結末に至るまできっちり理屈で片を付けているのに対し、今シリーズは半ばそれを放棄しているようにも感じられ、力業で捻じ伏せてしまっている印象を受ける。
奇しくも本作がモチーフの1つとして挙げている"怪異ありき"の「リング」シリーズは、そのあたりの説得力が凄かった。
人智を超えたバケモノが介在しているとしても、そこはそれなりの落としどころ、論理のまとめ方があるはずで、その点に関しては若干不満。





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