海洋空間車



スペシャルコラム

vol.3 並行輸入車の光と影…!?   2004.11.23


ボクが乗っているアルファ156スポーツワゴン
日本の正規代理店で売られているものではなく、
専門ショップを通じて本国・イタリアのアルファ・ロメオより
直接輸入して買ったものだ。
いわゆる並行輸入車というヤツ。
いろいろな面で利便性が高く、
ある意味真っ当な正規輸入車ではなく並行輸入車を購入した理由は、
正規ディーラー車にボクが欲しい仕様
(具体的に言うとマニュアル・トランスミッション)がなかったから
ブランドもの好きな女性などの中には、
日本の正規代理店が仕入れていないレアな仕様のバッグや靴、
時計などを本国から個人輸入という形で直接買い付けている人もいるようなので、
それと同じようなものだと考えてもらえれば理解は早いと思う。

ボクが並行輸入車をこのたび買うに当たって一番苦労したこと、
それは情報の少なさ
今は自動車雑誌が本当に数多く、
書店に行けば10種類やそこらはすぐに見つけられると思うが、
そのように普通に書棚に並んでいる数多の雑誌の中でも、
並行輸入車に関する情報(本国仕様のグレードや装備のヴァリエーション、
日本で並行輸入車を取り扱っているショップなど)を
積極的に載せているものはボクが認識できる限り皆無に等しい。
ボクはたまたま幸運にも、
地理的にもそれほど遠くなく経験も豊富なショップに巡り会えたものの、
インターネットというものがこれほど世に普及していない時代だったら
それもどうなっていたことか分からない。

日本のメジャーな自動車雑誌が軒並み並行輸入車を無視している
(ともすれば否定するスタンスをとる)のは、
ひとえに各正規輸入および販売代理店が
雑誌の出版そのものに関わるほどの大スポンサーであり、
また取材や記事執筆そのものさえも
彼らの協力なしには成立し得ないから
に他ならない。
“正規代理店のフィアット・オート・ジャパンを通さずに
本国からアルファ・ロメオを買う方法”、
なんてまともな自動車雑誌の上で書けるわけないもんね!

そのことについては、ボクもメディア媒体に身を置く立場、
少しは事情が理解できるつもりだから否定する意思はないし、
民間企業たる出版社がおまんまを喰っていくための
ライフラインを守っていくことは当たり前だと思っている。
だからここでは肥大化する日本の資本主義経済における
ジャーナリズムの腐敗体質について糾弾するわけでも、
出版社とメーカーとの酒池肉林、
札束乱れ飛ぶ接待地獄(ホントか?)を告発するわけでもなく、
ただ単にタイトル通り、
並行輸入車って何じゃろかいのぅ…と嘆きたいだけなのである!
まったくの蛇足だが、そうした大手雑誌に寄稿している自動車ジャーリストたちや、
さらには編集部員たちの中にも少なからず並行輸入車を所有している人がいる、
という事実はなかなかにアイロニック。
彼らこそ日本を代表する車好きたちなんだから
本当はそれこそ当然のことなんだけど。

車が好きで偶然このページを読んでくれている人の中には、
ひょっとしたら並行輸入車を購入したいと思っている人、
もしくは現時点ではそこまで具体的に考えていなくても、
『○○が欲しいんだけど正規輸入車には欲しい仕様がないんだよなあ』、
なんて不満を感じている人もいるかも知れない。
そんな人たちのために少しだけでも参考になることを願って、
ボク自身の経験から感じることをいくつか書いてみようと思う。

まず始めに、並行輸入車といえども同じ車、必要以上の気負いは不要だ。
ものの本などには、『ヨーロッパ各国と日本とでは気候も違うし、
また法的規制も異なるから、触媒を始めとする排気系統やエアコンなどが
日本向けにチューニングされていない本国仕様車はふさわしくない』
という主旨のコメントが見られたりすることがあるが、
それに関してはあくまで素人考えながら
それほど神経質に心配する必要はないと思う。
昔のことはいざ知らず、そもそも今現在、
ヨーロッパの各メーカーがわざわざ日本の気候向けに
チューニングを施しているとはちょっと考えづらい。
だって正規代理店で買った
正規輸入車たるアルファ・ロメオを乗っている知人などは、
夏場あまりにクーラーの効きが悪く、たまらずディーラーに持ち込んだら
『イタリアの車ですからクーラーはあんまり効きません、
ほらイタリアの夏って日本と違ってカラッとしてるでしょう?』

と言われたぐらいだから!
排ガス規制だって現在のEU各国の規制値は日本よりもはるかに厳しいと聞く。
日本国内では未だに旧い法が残っているため
正規輸入では認められないヨーロッパのディーゼル・エンジンは、
ガソリン・エンジンをしのぐ勢いのクリーンさだというほど、
EUメーカー製エンジンの排ガス成績は優秀らしい。
まあそもそも並行輸入車といえども
普通に日本の車検を通ってナンバーをもらっているのだから
その時点で心配はないと言える。


並行輸入車のメリットとしてボクがざっと思いつくのは以下の通り。


メリット1. グレードが多様

これは当たり前といえば当たり前、
これが目的で並行輸入車をチョイスする人がほとんどなんだから。
でも当たり前だけど実は最大にして何ものにも代え難い無二のメリット
ヨーロッパでは未だに主流であるマニュアル車(特に中・小型車)や、
日本にはなかなか正規輸入されない小排気量グレード、
ラグジュアリー仕様ではないベーシック仕様車、
ボディカラー、内装色、オプションなんかも本国仕様から選びたい放題。

メリット2. オリジナル・ヴァージョンに乗れる

ご存知の通りヨーロッパ各国はイギリスを除くほとんどの国が右側通行、
すなわち車のハンドルは日本と逆の左。
これはあくまでボクの経験則なんだが、
もともと左ハンドルとして作っていた車を右ハンドルにした場合、
いくつかの不具合、とまではいかないが
やや不自然な動作および反応がどうしても生じてくると思う。
具体的に言うとそれはブレーキのフィーリングや効きであったり、
パワーステアリングの作用具合であったり、
左右の重量バランスの違いからくるタイヤとホイールハウスの干渉
(一般に自動車は運転席に人が一人乗っている状態を想定して
水平になるようにバランスをとって作られている)、
さらにはタイヤの偏磨耗など。
これらの様々なマイナス要因とは無縁であるオリジナル、
素の状態の車に乗れることはとても幸せなことである。

メリット3. 価格が安い(かも)

一般的にはこう言われているが、
正直言って今はそんなに特筆すべきほどには変わらない。
その理由として、日本の正規代理店が定価を下げてきた、
ここ2〜3年ぐらいのユーロ高、などが挙げられる。
これは購入する時の為替相場に左右される要素かな。
ちなみにボクが買った時は
最悪のタイミングだった
みたい…(ほぼ正規輸入車並み!)。

メリット4. 人に自慢できる

外車乗りたるもの、
人とは違うこと・ものを常に探し求めている目立ちたがり屋であるはず!?
決してカスタム仕様に大枚はたくような真似などせずとも、
誰も持っていないアナタだけの一台が所有できる(かも)!


メリットがあれば当然デメリットもある。
頭に浮かんできたものを以下に列記。


デメリット1. 購入・メンテナンスが不便

前半に記したように、我々が並行輸入車を手に入れたい、
と考えた時、集められる情報は存外少なく、
また取り扱っているショップも当然絶対数が限られる
(おまけに哀しいことだがこの手の店の看板を掲げている者の中には
金だけ持ち逃げする不届きな輩もいると聞く)ため、
まず購入店探しに一苦労

デメリット2. 保証が薄い

正規ディーラーで購入した場合、
たとえばアルファ・ロメオでは3年保証(その間のメンテナンスは原則フリー、
走行中に自走不能になった時でも無料でレッカーしてくれるなど)が付いてくるが、
並行輸入で買った場合は
そのショップ独自のローカル・ルールによって変わってくる
もともと正規代理店が定める価格の中には
この保証期間に発生するメンテナンス料金も含まれているから、
それを勘定に入れていない(はずの)並行輸入車に
同等のサーヴィスが付属してこないのはある意味仕方がない。
言い換えれば並行輸入車の場合でもショップとの交渉によって、
たとえば○万円プラスするから3年保証を付けてくれ、
といった話もできるということ。
ちなみにボクの場合は良心的なショップなので特に保証オプション料金もなく
1年保証が付いてきました(こんなもんでいいですか、ホリイさん!)。

デメリット3. リセールヴァリューが低い

これは一概には言えないのだが、
よっぽどその車種およびグレードを熱望している人が
次期オーナーとして具体的に現れない限り、
下取りではお安く買い叩かれる可能性が高い
市場では正規ディーラー車でない、というだけで嫌われがちだし、
また不人気車ほど価値が低い、というのも市場経済の原則なので仕方ないか。

デメリット4. カタログの入手が困難

デメリット1に挙げた内容とも若干関係してくるのだが、
本国仕様のカタログをGetするのは
ショップを見つけることよりもある意味難しいかも知れない。
なぜなら、当然並行輸入を手がけている店でないとまずカタログは持っていない。
それに店を見つけたとしても、
必ずしも最新ヴァージョンの本国カタログが備えられているとは限らないし、
またたとえあったとしても商談をしに来た客一人一人に配れるほど
潤沢に持っているなどということはほとんどないからだ。
そんな時は『絶対に購入するから本国からカタログを先に取り寄せてくれ』
と覚悟を決めて頼むか、webで本国仕様のスペックを探すしかない。
ただwebで探すといっても英語表記ならまだましだろうが、
ボクのケースのようにイタリア語なんかの場合はもう笑っちゃう。
ちなみにボクの場合は良心的なショップなので
僥倖にも本国仕様の新しいアルファ156SWのカタログ、
1部いただいちゃいました(こんなもんでどうですか、ホリイさん!)!

デメリット5. マニュアルが読めない

カタログのケースとは逆に、これだけは日本のヤツをくれ!と言いたくなる
そして繰り返すけれど、英語ならまだ何とかなろうというものだが、
アルファ・ロメオのマニュアルはイタリア語、もう笑っちゃう。
正規代理店にてマニュアルだけ買うことができないことはないんだが、
そのお値段はウン万円
あんな分厚くて面白くもない、それでいて必要不可欠な本が。
数百万円の車を買おうっていう時などはしばしば気が大きくなっていて、
『ん?オプション15万円?20万円?どっちでもいいよお』
なんて数万円単位の金をおろそかにしがちな
恐ろしい精神状態になることもままあるのだが、
さすがにマニュアルにウン万円を払うのはバカバカしい。
ちなみにボクの場合は良心的なショップなので
日本語マニュアルのコピーをくれました(もういいでしょう、ホリイさん!)!


あれ?なんかメリットよりデメリットの記述量の方が多くなってる?
最後にちょっとかっこつけて
真面目なことを書いてみようというわけでもないけど、
でも並行輸入車を買おうと考えている人にとってもっとも大事で、
また譲れないポイントはメリット1で挙げた
グレードが多様”という一点に尽きると思う。
自分の欲しい仕様が正規ディーラー車にない、
だからいくつかの不便も分かってるけど並行輸入で買う!
と決意を固めている人ならば、
はっきり言ってここでボクがあげつらっているデメリットなど
すでに百も承知かも知れないし、
またそんなことぐらいで購入の意志は揺らがないだろう。
ショップが遠い?下取りが安い?それがどうしたんだい?
乗りたい車に乗るよ(もちろん手の届く範囲で…)!
それが気持ちいいじゃないか!






戻る

表紙