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スーパープレイヤー列伝


Player File No.1     2003.3.10 (2004.11.2 データ更新)

※2003シーズン終了後に引退




マイケル・ジョーダン Michael Jordan マイケル・ジョーダン

ガード
198cm 98kg
1963年2月17日生
1984ドラフト1巡目3位指名
所属チーム:ワシントン・ウィザーズ
出身校:ノース・キャロライナ大
主なタイトル:シーズンMVP5回
         ファイナルMVP6回
        オールNBA1stチーム10回
        得点王10回(歴代最多)
        スティール王3回
        オールスター選出14回
          …などなど多数



NBAを知らない人でも知っている、いわずと知れたバスケットボール界の“神様”。
彼はすでに一個人の持ちうるパーソナリティを遥かに凌駕した、
普遍的なカリスマの持ち主と言っても過言ではない。

すみません、私、信者です…。

1986年のプレイオフでのこと。NBA2年目のジョーダンは、足の骨折のため
そのレギュラーシーズンの大半を休んでいた。
しかしプレイオフに入って、いてもたってもいられなくなったのか、
当時隆盛を誇っていた宿敵の一つ、ボストン・セルティクスとの試合に
ドクターの制止を振り切って出場、そのゲームで、
今でもプレイオフの個人最多得点として記録に残る63ポイントを上げた。
試合後、“ホワイト・レジェンド”のニックネームを持つセルティクスのエース、
ラリー・バード*1は 「あれはマイケル・ジョーダンの姿をした神だった」と語ったという。
誰彼ともなくジョーダンを“神”と呼ぶようになったのはそれからのこと。

マイケル・ジョーダンの真の凄さとは、一体どこにあるのだろう。
もちろん、オフェンス・ディフェンスともに卓越したセンス、
身体能力、シュート力、コートヴィジョン、そして芸術的ともいえる美しいダンク、
すべてにおいて優れているプレイヤーであることは間違いない。
個人の能力のみならず、当時の所属チーム、シカゴ・ブルズを
実に6度もNBAチャンピオンに導いたように、
周りのプレイヤーの力を引き出すリーダーシップも備わっている。
が、その中でもジョーダンがジョーダンたる所以の真骨頂は、
その精神力にあると私は思っている。

過去に2度、NBAから引退しながらも、そのたびに復帰してきたことからも分かるように、
彼は異常と称してもおかしくないほどの負けず嫌いであることは有名だ。
たとえば、試合前の練習時に行われる紅白戦やワン・オン・ワンでも決して手を抜かず、
時にはチームメイトが閉口してしまうほどに、相手を打ちのめすまで全力でプレイする。
また、負けず嫌いだから常に自分がトップに居続けられるだけ努力を怠らない。

そして、彼の強靭な精神力、カリスマ性を最も如実に表しているのはクラッチ・シュート
クラッチ・シュートとは、試合終了間際(もしくはクォーター終了や
ショットクロックなどの時間切れ間際)に決めるシュートのことである。
残り時間はわずか、このシュートを決めれば勝つ。決めることできなければ負ける。
そんな時、チームは必ずジョーダンにボールを集め、
そしてジョーダンはそのシュートを必ずバスケットに沈めるのだ。
これがまさにスーパースター。

スーパースターといえば、マスコミ、報道陣に対する対応の姿勢にも、
ジョーダンがスーパースター足りうる条件が見てとれる。
あえて実名で悪例を挙げさせてもらうが、たとえばサッカーの中田英寿、MLBのイチロー
彼らは言うまでもなくそのプレイは超一流、スーパースターの域にあることは確かだが、
果たしてそのマスコミに対する態度はどうだろうか。
以前、中田がある記者に「今日の試合はどうでしたか?」と訊かれた時に、
「そんな抽象的な質問では答えようがない。もうすこし勉強して来てください。」と
憮然として返したという。
イチローに関しても、私は関西のマスコミ業界に身を置く者なので、
過去に幾度か彼にインタビューする機会も得たが、
その態度はお世辞にも好感を持てるものではなかった。
周りのジャーナリストたちからも「彼はちょっと…」という声は少なからず聞こえている。
ところがマイケル・ジョーダンはそうではない。
中田やイチローをもう一段上回る注目度で常に衆人環視にさらされてきたジョーダン、
「今日の試合はどうでしたか?」なんて質問は恐らく何百回と受けてきただろう。
しかしそのたびに彼は、記者をバカにする代わりに丁寧に真摯に答えてきた。
記者に語る言葉はファンに向かって語る言葉に等しい
ということを彼はよく分かっているからだと思う。

スポーツ選手は愛想をふりまく必要はない、
プレイで全てを示せばよい、という考えも確かに一理あるが、
同時に、マスコミを通じて世間に伝えられる姿がそのプレイヤーの人格を物語っていることも
また、真実である。
そういう意味でも、マイケル・ジョーダンは本当のスーパースターだと言える。

あれ、精神論ばっかでプレイについて全然書いてないや。いいのかな?
プレイに関しては、彼のビデオもたくさん出ているので、
見たことがない人はぜひ一度その目で見てみてください。
きっと、あなたが今までに知っているバスケットボールとは
まるで違うスポーツをしている男の姿が、そこにはあるでしょう。
百聞は一見に如かず、とても私の拙い文章でここに表現することはできません…。

今年こそ本当のラスト・シーズン、
40歳を迎えた神様が無事にそのキャリアを終えられますように。






*1 ラリー・バード…80年代当時、ガタ落ちしていたNBAの人気を
   マジック・ジョンソン(ex ロサンジェルス・レイカーズ)とともに大きく引き上げたスーパースター。
   運動能力には決して恵まれていなかった白人フォワードだが、
   正確無比のスリーポイントシュートと天性のゲームセンスを武器に、
   3度のNBAチャンピオンに輝く。
   1992年、バルセロナ・オリンピック代表となったオリジナル・ドリームチームの一員。





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