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少し前の話なんだけど。 
 
仕事の帰りが8時、9時、10時という時間帯が多くなってきた最近、 
渋谷は道玄坂を通って駅に行くのだけど、 
なんかチンピラが多いな?という日々が続いていた。 
チンピラなんて、あまり表に出てこないイメージが強かったのに、 
4〜5人の固まりで道を塞ぐようにしているのをよく見かける。 
 
「何か、イベントでもあるのでしょうか?」 
 
と聞くわけにもいかないが…。 
柄が悪いわ道を通れないわ(通るんだけどね。帰れないと困るもんママ)、 
物騒なのかなぁと感じていた頃の木曜の昼休み、 
定期券を買いに駅まで歩いていた。 
「ん?」 
道玄坂の車道のど真ん中に、ブラックスーツを着崩し、 
少し開いたシャツの胸元からは金色のネックレスがシャキーン☆な、 
強面本職のお兄さんが立っている。 
 
クラスでいえば、「兄貴」。 
 
なぜ車道のど真ん中に?真昼間に?? 
 
と思って、見ていたら、これも車道のど真ん中に黒いデカイベンツが止まっている。 
強面の「兄貴」、 
反対の車道のど真ん中で睨みを効かせて立ち塞がり、車を止めている。 
なんか、ホントにヤバイ方々の登場だ。 
「これから、何が起こるのか??」 
一気に周りの空気が変わった109の交差点。 
好奇心を抑えられずに見学することにした。 
めったに見ることはできないし。 
 
と、黒いデカイベンツから、 
うちの組長、よその組長、俺んとこの代貸しみたいな風情の方々が降りてきて、 
4〜5人の強面に囲まれながら、 
車を止めた反対側の建物の中に悠々と歩いて消えていった。 
 
その間、信号が3〜5回変わった。 
みな、怖くてクラクションも鳴らさずに黙ってみている。 
 
少しして、黒いベンツがUターン。 
この間、本職強面の「兄貴」が誘導。 
この後ワゴン車がUターンしようとして「兄貴」が頭を下げてるので、 
「あっ、一般者に迷惑掛けてスミマセンって謝っているのか。意外に常識的なのか?」 
と思ったらそうではなくて、大勢の強面を乗せていたらしいワゴン車だった。 
運ちゃんが思い切り、グラサン、スキンヘッド、髭、くわえタバコの悪人面。 
「大兄貴」か「叔父貴」あたりか???? 
 
脇をピザ屋のバイクがすり抜けて来たんだけど、 
運転のお兄さん、顔がメッチャ引きつってました。 
そりゃ〜そうだよね。チンピラじゃなく、ブラックスーツの強面ばかり。 
その中をすり抜けるのも勇気がいるさ。 
しかし、ピザが冷めるから進まねばならぬ。 
 
ここまで見て、お昼の時間がなくなるからその場から動いたんだけど、 
渋谷で何かが起こるのだろうか? 
物騒だ。 
 
その日の帰り、久しぶりに以前よく通った道を帰り、 
ヒップポップな洋服屋の黒人モーシス君がいるかな?と覗いてみると…。 
 
モーシス君がスキンヘッド! 
黒人で、筋肉ガーッが店の前で腕を組んでスキンヘッド。 
何?最近物騒だから、睨み効かせるためなのか?  
「どしたの!!」 
と、思わず聞いてみた。 
「暑くてね〜〜〜(^o^)」 
 
ずっこけるお答えを、アリガトウ!! 
なんだ、そんな理由かよ。 
チンピラ達に対抗してぢゃないのかよ(^_^;) 
 
「ホントに暑いんだよ。もう髪の中がかいいいの」とカリカリ頭を掻いてる。 
「バリカンで?」 
「そう。自分でやったの。安上がりでしょ?」 
「安いとかじゃなくて、ファッション?」 
「ううん。暑いから。髪の毛なくなったら、若返ったでしょう。 
 赤ちゃんみたいでアハハ、ちょっと恥ずかしい(^‐^)」 
 
いや、全然赤ちゃんみたいじゃないよ。 
夜の暗い中で見かけると怖いよ。 
面白いけど。 
 
「太陽が直に当たって、暑いのよね〜。早く新しい髪の毛が欲しいヨ(^o^)」 
夜の渋谷でヘロヘロと笑い合う、ヒップポップなカッコの黒人と、普通のカッコのオイラ。 
はたから見るとアンバランスな組み合わせだろうなと思いつつ、 
馬鹿話とお互いの家族の話を続けてヘロヘロ笑う。 
 
モーシス君いわく、あまり渋谷危険情報は出回っていない様子。 
偶然だったんじゃない?だって。 
異国より日本に渡って、家族を守りながら商売をやっているので、 
まぁ敏感にはなっているはずの彼がゆうから、そうなんだろう。 
 
んじゃまたねと握手をして別れるのだが、毎回手のひらを指でくすぐるのが彼のお約束。 
これって、彼の民族の礼儀作法なのかいな。 
くすぐったいから、やめてねm(_ _)m 
 
 
 
 
 
  
 
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