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従弟のノブチャンが遊びに来た。 
それはいつものことなんだけど、いつもと違ったのは、仕事帰りだという、そのイデタチ。 
見た途端、のけぞった(>_<) 
坊主、髭、サングラスはいつもの事だが、ズボンはニッカ(知ってる?)。 
まぁ、それはいいとしよう。 
上半身が、鮮やかな唐草模様と言ったらいいのか。 
ヤクザの刺青がそのまんま模様になりました、という風情の長袖襟無し開襟シャツ。 
 
…怖いんだけど。 
 
マジ、見かけが怖いんだけど…。 
 
人間、怖いものや想像を絶するものを見ると、笑いがでるのは何故ですか? 
 
大笑いしてしまいました。 
怖くて。。。 
従弟は、なんで突然笑い出すのコノヒト?て感じで、 
「何、おまえ?」 
「いや、怖くて」 
「何いってんの。仕事着だぞ、これ」 
「ハハハ。これ、手作り??」 
ハァ?って顔をした後、コイツは俺の服で笑いやがると気付いた従弟。 
ムッとして、 
「買ったに決まってるだろう」 
「どこに売ってんの??」 
「教えナ〜イ!!」 
唇突き出した憎たらしげな顔でいわれちった。 
 
アヤがトイレから帰ってきた。 
従弟を見た途端、 
「きゃ〜〜、怖〜い!どしたの!コワ〜イ!!」 
と大笑いしながらコワイコワイを連発。 
「どこに売ってんの?」とアヤが聞く。 
親子で同じ事を聞いてんなぁ。 
それが余計にしゃくに障って、 
「教えない!なんか、むかついてくるなぁ。 
おれはピエロかぁ?笑われに来たんじゃねぇんだぞ」 
「てか、そんな服売ってんだぁ。んで、買う人いるんだね〜」 
「ばか、俺の周りの仕事してる奴、みんなこんなだ」 
「そのカッコで集団で電車乗ると、混んでいても混んでないでしょう」と私。 
「電車乗んないもん。 
でも、道を歩いていたら、サーッと避けてくれるから、助かるな。歩きやすくて」 
笑っちまう(^o^) 
「ママ、コンビニで何か買ってくるものない? 
あったらアヤ行って来るから、ついでにカメラ買ってきていい?」 
「前、カメラあったぢゃない」 
「現像にだしちゃったの。もったいないことしたなぁ、まだフィルムがあったのにぃ。 
ノブチャン写真に撮りたい」 
「あ、ならカメラだけ買ってきていいよ」 
「お前ら、ふざけんな! 
俺を撮るためだけにカメラ買うのかよ!おかしいんぢゃない?」 
「いや、こんな珍しいのは記念に残したい…アハハハハハハッ!」 
「…この家、鈍器とかない?なんか腹たって一発殴りたいんだけど」 
 
笑いの発作がおさまって、飲みながら仕事をすることは厳しいな、という話題になる。 
TVをつけていたのだけど、TVをみながら、 
「俺の仕事、ヤローばっかじゃん。 
まだこっちにいるなら街歩いているお姉さんとか見かけるけどよ、 
この間ダムの工事で3ヶ月、山の中にいただろ?もう、気が狂うね」 
「男ばっかで?」 
「それもあるけど、仕事が大体夕方頃終わるだろ? 
そっから飯食って、後はTV見ながら飲むしかやることがねぇの。 
で、TVに綺麗なお姉さんがいっぱい映ってんのに、周りをみるとヤローばっか。 
しかも職人だけだろう?もう、目が合うと喧嘩が始まるんだわ。 
『なんだ、てめぇ、コラァ!』って。 
ウワーッって騒ぎが1週間を過ぎると、もう毎晩になるんだ。気がおかしくなるよ」 
「あ、こないだ行ったとこの話?」 
「そう」 
 
従弟によると、職人は気が短く、どっかの組か? 
って感じの彫り物を背中にしょっているのが大半だという。 
仕事着の袖から、なにやら綺麗な色が出ている。 
それを見て、従弟はうわー、大変なところに来たぁと、ますます憂鬱になるそうだ。 
そして、風呂タイム。 
湯船に浸かりながら洗い場をみると、 
背中に彫り物した奴らがバン、バンと並んで、綺麗に色の入ったものや、 
素彫りでやめてんのや、もう少しで完成とか、いろいろ鑑賞できるそうだ。 
そして、やっぱり見事な絵もあって、なかなか見ごたえのある風呂タイム。 
 
「展覧会?」 
 
「そ。入場無料のな」 
 
仕事が無事終了し、 
山から帰ってくる途中に見かけるお姉さん達が、やたらと美しく見えて困ったそうだ。 
そして突然アヤに向かって、 
「職人と結婚は、絶対しない方がいいぞ。ろくでもねぇのばっかしだからよ」 
そう締めくくった。 
いまいち、話がすっきり繋がらないけど、喧嘩の他に何をやっていたのでしょう? 
この男どもは? 
 
ぽつんと一言、 
「熊を殺して食ってきた」 
 
 
 
 
 
  
 
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