海洋空間佳本


魍魎の匣 魍魎の匣」★★★★★
京極夏彦
講談社

2005.8.22 記
普通、あまりにもクオリティの高いデビュー作を世に送り出し、それに見合う評価も受けた作家の次作は前作に及ばないものだと思うのだが、この小説に限ってはそんなつまらない法則はあてはまらず、個人的にはあの「姑獲鳥の夏」をも凌ぐ名作だと感じた。

京極堂、関口、榎木津、木場らが創り出すあの空気感はそのままにさらに魅力的に、そして巧妙に緻密に張り巡らされた伏線と骨格のしっかりしたプロット、さらには鋭敏な言語感覚によって積み上げられた文章群こそが、“あの”前作以上。
主たる登場人物たちの役割分担と性格付けはより明瞭になっているように読み取れる。

毎度のことながら、京極堂の口を借りて語り広げられる作者の思索的考察は必読だ。
小説家、などという狭量なくくりではとても京極夏彦のパーソナリティは表しきれるものではない、ということがよく分かる。





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